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太陽光は元が取れないと言われる理由——「元が取れる」を自分で検算する方法
「元が取れるか」は、設置単価(総額÷容量、万円/kW)でほぼ決まります。
国の売電制度(FIT)は、国の想定値どおり25.5万円/kWで設置できた場合に、 およそ10年で回収できる水準に単価が設計されています。 実際の既築の平均32.6万円/kWだと約13年。 一方、訪問販売の実例にあった66.7万円/kWでは約28年、90.8万円/kWでは約38年かかる計算になり、 機器の寿命を考えると現実的に回収できません。
「太陽光は元が取れない」と言われる理由の多くは、太陽光そのものではなく買った値段にあります。
前提:2026年度の売電制度は「最初の4年に回収を寄せる」設計
住宅用太陽光(10kW未満)で発電して余った電気は、国の制度(FIT)で10年間、決まった単価で売電できます。 2026年度に認定を受ける場合の単価は次のとおりです(出典1)。
| 期間 | 売電単価 |
|---|---|
| 1〜4年目 | 24円/kWh |
| 5〜10年目 | 8.3円/kWh |
| 11年目以降(FIT終了後) | 10円/kWh前後(小売各社の買取メニュー。国の想定値) |
以前は10年間一律(2025年度前半までは15円/kWh)でしたが、 2025年度後半から「初期投資支援スキーム」と呼ばれる2段階の単価になりました。 最初の4年間に高い単価を集めて、投資の回収を早める狙いの制度です。
ここで押さえておくべきことが1つあります。 5年目以降の8.3円は、家庭が電気を買う単価(30円前後)よりずっと安いという点です。 つまりこの制度は、5年目以降は「売る」より「自分で使う」ほうが得になるように作られています。 元が取れるかどうかは、売電収入だけでなく「買わずに済んだ電気代」で決まります。
国の公表値だけで検算する
経済産業省の調達価格等算定委員会が、売電単価を決めるために使っている想定値がすべて公表されています(出典2)。 これをそのまま使って、1kWあたりの年間の便益(得になる金額)を機械的に計算します。
| 項目 | 国の想定値 | 意味 |
|---|---|---|
| 年間発電量 | 約1,200kWh/kW | 設備利用率13.7%(8,760時間×13.7%) |
| 自家消費する割合 | 70% | 余剰売電比率30%の裏返し |
| 自家消費1kWhの便益 | 27.31円 | 買わずに済んだ電気代に相当 |
| 運転維持費 | 0.30万円/kW/年 | 定期点検などの維持費用 |
1kWあたりの年間の純便益(維持費を引いた後)は、次のようになります。
| 期間 | 計算 | 年間純便益 |
|---|---|---|
| 1〜4年目 | 1,200×(70%×27.31円+30%×24円)−3,000円 | 約2.9万円/kW |
| 5〜10年目 | 1,200×(70%×27.31円+30%×8.3円)−3,000円 | 約2.3万円/kW |
| 11年目以降 | 売電10円/kWhで同様に計算 | 約2.4万円/kW |
10年間の累計はおよそ25万円/kWです。 国の2026年度の想定値(設置費用25.5万円/kW)とほぼ一致します。 これは偶然ではありません。売電単価は「想定どおりの費用で設置すれば約10年で回収できる水準」になるよう毎年逆算して決められているからです。
国の想定値(25.5万円/kW)に近い価格で設置できるなら、制度上、約10年で元が取れる設計です。 それより高く買えば買うほど、回収は10年から遠ざかります。 「太陽光は元が取れるか」という一般論に答えはなく、「いくらで買うか」がほぼすべてです。
設置単価別・回収年数の早見表
上の年間純便益を使って、設置単価ごとの回収年数を計算しました。 表中の「実例」は、知恵袋の相談から集めた見積もり実例のkW単価です。
| 設置単価 | 位置づけ | 回収年数の目安 |
|---|---|---|
| 15.4万円/kW | 実例の最安値 | 約6年 |
| 25.5万円/kW | 国の2026年度の想定値 | 約10年 |
| 32.6万円/kW | 既築の平均(2024年設置) | 約13年 |
| 45.9万円/kW | 実例(9.8kW・450万円) | 約19年 |
| 66.7万円/kW | 実例(4.2kW・280万円) | 約28年 |
| 90.8万円/kW | 実例の最高値(4kW・363万円) | 約38年 |
パワーコンディショナは20年前後で交換が必要になるのが一般的で、パネル自体の寿命も無限ではありません。 回収に20年以上かかる計算になる価格は、「元が取れない買い物」と考えるのが現実的です。 同時に、最安の実例(15.4万円/kW)では約6年で回収できる計算になることも分かります。 「太陽光は損」も「太陽光は得」も、単価を見ずには言えません。
この計算が崩れる3つの条件
上の表は国の想定値による機械計算です。次の条件で結果は変わります。
- 自家消費の割合——想定は70%です。日中ほとんど家に人がいない家庭では自家消費が減り、 その分を8.3円で売ることになるため、便益は下がります。 逆に在宅勤務などで日中の使用が多い家庭は有利です。
- 日照と屋根の条件——年間1,200kWh/kWは全国平均的な想定です。 北向きの屋根・積雪地・日陰では発電量が減ります。 営業のシミュレーションに使われている年間発電量が1,200kWh/kWを大きく超えていたら、その根拠を聞いてください。
- 電気代の単価——自家消費の便益27.31円/kWhは現在の電気料金水準にもとづく想定です。 電気代が上がれば便益は増え、下がれば減ります。将来の電気代は誰にも分かりません。
また、この計算にはパワーコンディショナの交換費用(20年前後で1回)を含めていません。 回収年数が20年に近い場合は、実際にはさらに不利になります。
営業トークと突き合わせる
- 「10年で元が取れます」
- 国の想定値(25.5万円/kW)に近い設置単価のときだけ成り立つ説明です。 まず見積もりの総額を容量で割って、25.5万円/kWと比べてください。 大きく超えているのに「10年で回収」と言うなら、シミュレーションのどこかに 楽観的な仮定(過大な発電量・高すぎる電気代上昇率・100%に近い自家消費率)が入っています。
- 「売電価格が上がった今がチャンス」
- 2026年度の「最初の4年24円」は単価の前倒しであって、10年トータルの売電収入が大きく増えたわけではありません (5年目以降は8.3円に下がります)。制度の設計目標は一貫して「約10年で回収」であり、 「今なら儲かる制度」になったわけではありません。
- 「電気代が全部浮くので実質タダ」
- 発電するのは日中だけで、想定される自家消費は発電量の70%です。 夜間の電気は買い続けることになります(蓄電池を足せばその分の設備費用が増えます)。 「浮く電気代」は月の電気代全額ではなく、自家消費できた分だけです。
よくある質問
- 「太陽光は元が取れない」というのは本当ですか?
- 設置単価次第です。国の想定値25.5万円/kWに近い価格なら制度上およそ10年で回収できる設計ですが、訪問販売の実例にあった66.7万円/kWでは約28年、90.8万円/kWでは約38年かかる計算になり、機器の寿命を考えると現実的に回収できません。「元が取れない」の多くは太陽光そのものではなく、買った値段の問題です。
- FITの10年が終わったら、売電できなくなりますか?
- できなくなるわけではありません。固定価格での買取が終わった後も、小売電気事業者の買取メニューで売電を続けられます。単価は10円/kWh前後(国の想定値。買取メニューの平均10.1円)に下がるため、11年目以降は「売る」より「自分で使う」比重が増えます。
- 蓄電池もセットで入れたほうが得ですか?
- 蓄電池のぶん設備費用が増えるため、太陽光単体より回収は長くなるのが基本です。夜間の使用量が多い家庭や停電への備えを重視する場合に検討する価値がありますが、「セットのほうがお得」という営業トークだけで決めず、蓄電池単体の型番・容量・金額を分けた見積もりで判断してください。
- 営業のシミュレーションは信用していいですか?
- シミュレーションの前提を国の想定値(年間発電量1,200kWh/kW・自家消費70%・自家消費の便益27.31円/kWh)と見比べてください。発電量や電気代の上昇率が想定値より大きく楽観的なら、その根拠を質問してください。前提を変えれば回収年数はいくらでも短く見せられます。
検算の次は、単価そのものを比べる
回収年数は設置単価で決まる以上、単価を下げる唯一の方法は複数社の比較です。 無料の一括見積もりサービスで、同じ容量・同じメーカーの条件で単価を並べてから判断してください。
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出典
- 資源エネルギー庁「買取価格・期間等(2026年度以降の価格表)」 enecho.meti.go.jp — 住宅用太陽光(10kW未満)の2026年度の調達価格は24円/kWh(〜4年目)・8.3円/kWh(5〜10年目)、調達期間10年間。 2025年度上期(4〜9月)は15円/kWh。
- 経済産業省 調達価格等算定委員会(第100回)資料1「太陽光発電について」 meti.go.jp/shingikai/santeii/pdf/100_01_00.pdf — p.43:2026年度の想定値(システム費用25.5万円/kW・運転維持費0.30万円/kW/年・設備利用率13.7%・ 余剰売電比率30%・自家消費分の便益27.31円/kWh・調達期間終了後の売電価格10.0円/kWh)。 p.38:2024年設置の実勢(既築32.6万円/kW等)。 p.42:調達期間終了後の売電価格(買取メニューの平均10.1円/中央値9.5円)。
- 本文の回収年数は、上記の公表値を用いた機械計算です(割引率・ローン金利・ パワーコンディショナ交換費用・廃棄費用は含みません)。個別の条件で結果は変わります。